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パパが会社に行くと娘が泣きじゃくる

まだ私がサラリーマンだった頃の話です。3歳になったばかりの娘は、私が会社に出かけようとすると、「パパお願い。会社行かないで。わたし寂しい・・・」と大泣きして全力で引き止めたものです。

後ろ髪を引かれる思いで、玄関口で娘とお別れをしなければなりません。

その話を会社で年頃の独身の同僚社員にすると、「いいなあ。私も早く結婚して子供欲しいなあ。」というコメントや「オトコはいらないけど、子供は欲しい。」というラディカルな意見までありました。

確かに自分との一時的なお別れで、ここまで全力で悲しみを表明してくれる存在は、間違いなく子供しかいません。

例えば、会社の飲み会なんかで「お先に帰ります。」と言っても、「あっ、お疲れさまです。」と引き止めたり、悲しそうな顔をする人は誰もいません。

これは、単に私の個人的な人望の欠如によるもので、もしかしたら世間一般ではもっと周りの人から悲しまれている方はいるのかもしれません。

しかし、それにしても泣いて全力で引き止められるという経験はなかなかないことなのではと思うのです。

誰かにここまで求められたり、必要とされることはない

だからこそ、より一層に子供を可愛いと思うのではないでしょうか?

じゃあ、子供は天使かというと、必ずしもそうではありません。この話には続きがあります。

泣きじゃくる娘に次のように諭しました。

「パパね、お仕事に行かないとお金が貰えないんだ。そうなるとユッキーちゃんにアンンパンマンのチョコレート買ってあげられなくなるけどいいの?」

すると娘は泣くのをやめて、次のように返事をしました。

「じゃあ、お仕事行っていいよ。」

満面の笑みで私を見送ってくれました。あの“泣き”は、一体なんだったのでしょう?

このやり取りによって、私は次の2つの事実を新たに発見しました。

①娘も理屈での説得を理解できるほど成長した

②パパ < チョコレート

①はともかく、②はちょっと問題です。

パパと一緒にいる貴重な時間より、100円ちょっとのチョコレートの方が娘にとって価値が高い。これが現実ということに初めて気づきました。

自分の周りの人間で、私を身近で見ていて最も過小評価している妻でさえ、チョコレートよりは価値があると思っているはずです。

それなのに・・・

しかし、落ち込んでいても仕方ありません。

こういった時には、視点を変えてみるのが一番です。

娘にとって、パパの価値が低いのではなく、チョコレートの価値が高いだけなのです。

大人はダイヤモンドに最大限の価値を見出しますが、子供にとってはただの綺麗な石ころです。

同様に子供にとっては最大限の価値があるチョコレートも、大人にとってはただのお菓子と感じるだけなのです。

そう前向きに考えてみました。